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Message from HARA-TETSUO
【2001年4月】 【▲メッセージ目次へ】


 今、新連載の1話目が着々と出来つつあるんですよ。まだ詳しいことは発表できないんですが、今度の作品は歴史ものというか、昔のある激動の時代を舞台としたフィクションになります。モノクロの映像や写真が資料として残っている時代なので、きちんとした史実に基づきながら、そこに創作をふんだんに盛り込んでエンターテインメント作品をつくっていく、という感じで進めているところです。

 僕も戦国ものはかなり描いてきましたが、今度の作品の舞台となる時代はまったく新しい試みですね。世界観をつかもうと歴史を勉強していくと、そんな昔のことではないように思えてくるし、すごくリアルに感じる時代なんです。でも、僕らはその時代をほとんど知らないし、実際に自分の目で見たわけではない。資料映像もたくさん残っているんですけど、どういう情況であったかは本当のところはわからないわけです。ただ、さまざまな立場や考えをもった人々の思いが交錯して大きなうねりができていった時代であることは確かで、そうした多くの先人たちがつくっていった歴史の上に、今の僕たちの現在があるということは、あらためて実感していますね。

 今度の作品には歴史に名を残した人物も出てくるんですが、その人物の資料写真などを参考にはしても、その人のイメージを絵にしていった時点で、ある程度の創作になっていきます。登場する人物や団体は実在のものとは関係はなくとも、できるだけリアリティを追求して、その時代の雰囲気を伝えながら、フィクションとしてどんどん面白くしていけたらいいですね。リアルな史実をもとにしつつ、僕なりにアレンジした壮大な物語を描いてみたいと思っています。

 とはいうものの、久々に仕事にのめり込み始めたので、プライベートの時間がなくなって嫌だなぁという気持ちもいまだあるんです。またずーっと原稿用紙に向かってばかりで「浦島太郎状態」になってしまうのかと。週刊連載から月刊連載に移ってやっていた頃は、仕事が終わると現実に戻れていろいろなことが感じられる余裕があったんですけど…。ま、しばらくのガマンだと思って頑張ります。

 やはり、プレッシャーも感じていると思うんですよ。漫画家生活も20年もやっていると、予想できないような変わったことってそんなに起きないじゃないですか。でも今は、初めて自分たちで会社をつくって、自分たちの雑誌をつくろうとしている。漫画業界の大きな体制から外れて、自分たちでルールでやろうとしている。当然、いろんなことが起こってきますし今までとは違ったプレッシャーを感じてくるようわけです。でも、つらくもあるんですが、充実感ややりがいを感じているのも確か。僕は生きがいを求めてきたんですよ。だから今、すごくおもしろい。生きているな! という感じですか。

 頭の中でいいアイディアを考えついても、いつのまにか流されて実行されないことが多いじゃないですか。特に漫画っていうのは頭の中にあるものを描くわけで、実行するわけじゃない。僕たち漫画家って、リアリティを追及しながらもリアリティがないんですよね。ところが、今は頭に描いていたものが確実にリアルなこととして動いている。自分の夢と現実が限りなく近づいて、それがうまい具合に実現されて動いていっている。

 でも、僕たちって漫画界では、やはり新参者で少数派で異端なんですよ。歴史に名を残した人の多くもみんなそうだったと開き直って、いつか業界の本流になれることを夢見て頑張るしかないですね。これから大変だろうなと思いますし、成功と失敗も紙一重だと思いますが、やるしかないですよ。僕たちのやったことが、いい意味で漫画の歴史の1ページに残ってほしいですから。  

2001年 4月 原 哲夫

 
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