トピック先生、ひと言いいですか

Vol.3 活版部門 / 人物線画担当 辻秀輝(つじひでき)前編

原哲夫と共に働くたくさんのスタッフを、抜き打ちでチョクゲキ!! 普段は見ることのできない原哲夫の素顔や、仕事のこぼれ話を大バクロするこのコーナー。3回目の今回、登場していただいたのは、活版部門・人物線画担当の辻秀輝さんです。

某有名美術大学を卒業したエリート、、、と思いきや、この業界に入ったのは30を過ぎてから、という異色の経歴を持つ辻さん。何に迷い、何を見据え、原作品に携わっているのか。激白、ヨロシク!!

“原作品らしさ”を出すための表現とは?
美大での専門は彫刻。立体物の造形などを学んでいました。卒業後は、広告関係のデザイン会社に就職したんですが、もともとパソコンも得意じゃないし、あまり肌に合わなくて1年ほどで辞めたんです。その後は、デザインや美術とはまったく関係ない、服の販売員に。いわゆる「ショップ店員」ですね(笑)。一応、店長にまでなったんですが、今度はそのお店が潰れてしまって……。どうしようかと悩んでいた時に、東北で震災があったんです。それで意識が変わりましたね。「ヤバいな」「このまま死んだら、オレ、何も残してないな」って。

たまたまその時、大学時代の友人が、「原哲夫のスタッフ、募集しているよ」って教えてくれたんです。よく考えたら、昔から絵を描くのが好きだったし、新しい業界に進むには、もう若くない年齢でしたが、いつ死んでもおかしくない時代だからこそ、思い切って飛び込んでみました。なので、この業界に来て、まだ3年ほどですね。

当然ながら、最初は完全な素人。なので、先生に迷惑をかけないように、また周りのスタッフさんについていくために、必死に勉強をしました。ヒマさえあれば、先生の絵を模写したり、作品を読み直したり、先生が好きな作家さんの絵を研究したり、そんな日々でしたね。
経験なし。プライドなし。真っ白な状態からの挑戦。
ボクはもともと原先生のファンで、『北斗の拳』は全巻もっていました。それもあって、友人も勧めてくれたんです。それまでも自己流でイラストを描いたりしていたんですが、プロの世界はすべてが別次元で、何もかもが目新しかったですね。趣味で描いていた時は、どこにでも売っているような普通の水性ペンだったので、インクをつけて描くってこと自体が初めてでした。

ただ、今思うと、立体や彫刻をやっていたことが活きている部分がありますね。特に原先生の画風は、マンガ的なデフォルメもありますが、彫刻などに通じる写実っぽさやリアリティが求められます。マンガができ上がっていく過程も、手探りで盛ったり、削ったりっていう、立体物の造形に似た作業を紙の上でやっている感覚です。

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つまり、この世界に入ったのは、30歳を過ぎてから。いま思うに、変に自分が確立していない、真っ白な状態だったのが良かったのかもしれません。作家を目指す人って、良くも悪くも、クリエイター肌で、“我”が強い人も多いと思います。それももちろん大切だと思いますが、その反面、自分の感性とは違うモノを受け入れにくくなってしまう。その点、ボクは、経験もプライドも何もない状態でしたから。何でも吸収しようと必死でした。
(中編につづく)